遺産分割でもめると「相続税の負担が大きくなる」ことも!


相続税コラム

遺産分割でもめると
「相続税の負担が大きくなる」ことも!

「相続税の申告って、10か月もあるから大丈夫よね…」

そう思っているご家族は少なくありません。

でも実は、申告期限までに遺産分割がまとまらないと、大きな特例が使えなくなることがあります。

今回は、ご相談にいらっしゃった渡辺さん一家の事例をもとに、「遺産分割が間に合わないと、相続税はどうなるのか」をわかりやすく解説します。

📖 事例

渡辺さんのお父様は昨年春に急逝されました。相続人は、母・長女(渡辺さん)・長男の3人です。

残された財産の中心は、自宅の土地と建物。
お母さんが相続すれば、「小規模宅地等の特例」が使えるはずでした。

ところが、相続のことを話し合い始めると、
長男から「自分の取り分をもっと増やしてほしい」という主張が出てきて、
家族の話し合いが泥沼に。

気がつけば、申告期限まで残り1か月。遺産分割協議はまだまとまっていませんでした。

「先生、このまま申告期限を迎えてしまったら、どうなりますか…?」

1
未分割のまま申告すると、特例が使えない

相続税の申告と納税の期限は、亡くなった日の翌日から10か月以内です。
この期限は、遺産分割が終わっているかどうかに関係なく、必ず守らなければなりません。

でも困ったことがあります。
遺産分割が終わっていない状態では、相続税を大きく減らす特例を使うことができないのです。

未分割のままでは使えなくなる主な特例

  • 小規模宅地等の特例…自宅や事業用の土地を、最大80%減額して評価できる特例
  • 配偶者の税額軽減…配偶者が受け取る財産について、1億6千万円まで相続税がかからない特例

渡辺さんのケースでは、自宅の土地を小規模宅地等の特例で80%減額できれば、相続税は大幅に抑えられるはずでした。それが使えないとなると、数百万円単位で納税額が増えることになります。

2
「分割見込書」を出せば、あとから取り戻せる道がある

では、分割が間に合わなかったら、もう取り返しがつかないのでしょうか。

実は、申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、あとから特例を適用して申告をやり直すことができます。

この書類は、「今は分割できていないけれど、3年以内にまとめる予定です」と税務署に届け出るためのものです。手続きの流れはこうなります。

申告期限内に「未分割」で申告・納税

特例なしで計算した相続税を、申告期限内に申告・納付する。このとき「申告期限後3年以内の分割見込書」を一緒に提出する。

申告期限から3年以内に遺産分割を成立させる

この期間内に分割協議をまとめることが条件。

分割成立から4か月以内に「更正の請求」を行う

特例を適用した額で計算し直し、払いすぎた相続税の還付を受けられる。

渡辺さんへは、まず申告期限内に未分割での申告・納税をしていただき、分割見込書を添付することをご提案しました。

⚠️ ただし、この書類の提出を忘れてしまうと、あとから特例を受けることができなくなります。未分割での申告の際は、この書類の添付が非常に重要です。

💰 また、未分割のまま申告する場合は、特例が使えない分だけ相続税の金額が大きくなります。その大きな金額をいったん期限内に納付しなければならないため、資金の準備が大きな負担になることも少なくありません。納税資金についても、早めにご相談いただくことをおすすめします。

3
3年を超えても分割できない場合はどうなる?

「3年あれば大丈夫」と思いたいところですが、訴訟になってしまうなど、3年を超えても解決しないケースもあります。

そのような場合には、申告期限から3年を経過する日の翌日から2か月以内に、「やむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署に提出し、承認を受ける必要があります。

承認を受けられれば、その後に分割が成立したときに更正の請求を行い、特例を適用することができます。ただし、これは自動的に認められるものではなく、訴訟が継続しているなど、客観的にやむを得ない事情がある場合に限られます。

✗ 分割見込書を出し忘れた場合

特例の適用は一切できない
払いすぎた税金は戻らない
後からの申請も原則不可

✓ 分割見込書を出した場合

3年以内に分割すれば特例OK
更正の請求で還付を受けられる
やむを得ない事情があれば延長も

4
渡辺さんのその後

渡辺さんは期限内に未分割での申告・納税を完了し、分割見込書も無事に添付することができました。

その後、弁護士も交えた話し合いの末、申告期限から約1年後に遺産分割協議が成立。更正の請求を行い、小規模宅地等の特例を適用した結果、当初の申告より相続税を大幅に減額し、払いすぎた税金の還付を受けることができました。

「あのとき先生に相談してよかった。分割見込書の存在を知らなかったら、と思うとゾッとします」とおっしゃっていました。

もし最初に「うちは仲がいいから大丈夫」と思って相談が遅れていたら、
状況は大きく変わっていたかもしれません。

📋 まとめ

  • 相続税の申告は、遺産分割が終わっていなくても期限内に行わなければなりません
  • 未分割のままでは小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が使えず、納税額が大きくなります
  • 申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、後から特例を受ける道が残ります
  • この書類の添付を忘れると、後から特例の適用は受けられません。申告期限が迫っていても、まず相談を。

★ 「申告期限が近い…」と感じたら、すぐにご相談ください

「もう間に合わないかも」と諦める前に、できることは必ずあります。
一緒に、最善の道を探しましょう。

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たかやまあゆみ税理士事務所 女性相続support

税理士 たかやまあゆみ

相続専門の税理士として、相続・事業承継をサポート。「難しい税務をわかりやすく」をモットーに、多くのご家族の相続に寄り添っています。