
相続コラム
離婚・再婚した場合の「相続トラブル」、
こんなに複雑になるの?
「前妻との子どもとは何十年も連絡を取っていないから、今さら相続には関係ないよね…」
こんなふうにおっしゃる方が、実はとても多いのです。
でも残念ながら、離婚・再婚の経緯がどうであれ、法律上の親子関係は相続が発生するまで続きます。
今回は、ご相談にいらっしゃった中村さん一家の事例をもとに、「離婚・再婚後に起こりやすい相続トラブル」と、その対策についてわかりやすく解説します。
中村さん(60代・男性)は、30年前に前妻と離婚し、20年前に現在の妻と再婚されました。前妻との間には成人した息子がおり、現在の妻との間にも娘がいます。
「前妻の息子とは離婚後ほとんど連絡がない。今の家族に全部残してあげたいんだけど、それって可能ですか?」
さらに詳しくお話を伺うと、現在の妻が再婚時に連れてきたお子さん(義理の娘)とも長年一緒に暮らしているとのこと。「義理の娘にも財産を残してあげたい」というご希望もありました。
このような複雑なご家族関係では、きちんと整理しておかないと、ご本人の意向とはまったく違う形で相続が進んでしまうことがあります。
1
前妻との子は、離婚後も「相続人」のまま
日本の民法では、離婚によって元配偶者との婚姻関係は解消されますが、子どもとの親子関係は一切変わりません。
つまり、中村さんが亡くなった場合、相続人は次の3人になります。
中村さんの法定相続人
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現在の妻(配偶者)…相続財産の1/2 -
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前妻との息子…相続財産の1/4(子の取り分1/2を2人で分ける) -
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現在の妻との娘…相続財産の1/4
「何十年も会っていないのに…」という気持ちはとてもよく理解できます。でも、法律はその事情に関係なく、戸籍上の親子関係をもとに相続人を判断します。
2
連れ子は「養子縁組」しないと相続人にならない
しかし、再婚しただけでは、連れ子(義理の子)は自動的に相続人にはなりません。法律上の親子関係がないためです。
✗ 養子縁組なしの場合
連れ子は相続人にならない
財産を渡すには遺言書が必要
遺言がなければ一切受け取れない
✓ 養子縁組ありの場合
実子と同等の相続権が発生
法定相続分で財産を受け取れる
遺言がなくても相続人として保護される
3
遺言書を書いても「遺留分」は侵害できない
「遺言書を書けば、前妻の息子には一切渡らないようにできますか?」
この質問も、よくいただきます。答えは「完全にはできない」です。
遺言書はたしかに強力な手段ですが、一定の相続人には「遺留分」という、最低限保障された取り分が法律で守られています。子どもの場合、法定相続分の1/2が遺留分となります。
中村さんのケースでの遺留分(例)
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前妻との息子の遺留分 = 相続財産全体の1/8(法定相続分1/4 × 1/2) -
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遺言でこれを下回る分配にすると、息子から遺留分侵害額請求をされる可能性がある
遺留分を考慮した上で遺言書を設計することが、トラブルを最小化する鍵です。
4
中村さんが取り組んだ3つの対策
ご家族の状況を整理した上で、中村さんには次の対策をご提案しました。
公正証書遺言の作成
現在の妻・娘への分配を明確にしつつ、前妻の息子への遺留分(1/8)を確保する内容で設計。形式不備による無効リスクがなく、安心して残せる形に。
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義理の娘との養子縁組
長年一緒に暮らしてきた経緯もあり、正式に養子縁組を手続き。これにより相続人として法的に保護されることになった。
↓
生命保険の活用
現在の妻を受取人に指定した生命保険を活用。死亡保険金は遺産分割の対象外となるため、前妻の息子との協議を経ずに確実に渡すことができる。
「こんなに整理できるとは思っていなかった。早めに相談してよかった」と、中村さんにはとても安心していただけました。
早めに専門家と一緒に整理すれば、きちんとご本人の意向を反映させることができます。
📋 まとめ
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離婚後も前の配偶者との子は相続人であり続けます。音信不通でも相続権は消えません -
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連れ子を相続人にしたい場合は、養子縁組が必要です。再婚しただけでは相続権は発生しません -
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遺言書は有効な対策ですが、遺留分を考慮した設計が不可欠です -
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複雑な家族関係があるときこそ、早めの相談が家族を守る最大の対策です。
★ 「うちの家族、大丈夫かな…」と思ったら
離婚・再婚が絡む相続は、早めに整理するほど選択肢が増えます。
一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
たかやまあゆみ税理士事務所 女性相続support
税理士 たかやまあゆみ
相続専門の税理士として、相続・事業承継をサポート。「難しい税務をわかりやすく」をモットーに、多くのご家族の相続に寄り添っています。