
相続コラム
遺言書で寄付をする「遺贈寄付」とは?
自分の意思で、財産の行き先を決める方法
「自分の財産を、長年支援してきた団体に役立ててほしい」
「自分の財産を、長年通っている教会に寄付したい」
そんなご相談が、近年少しずつ増えています。自分が亡くなった後に、財産を特定の団体へ寄付する——それを遺言書で実現する方法が「遺贈寄付」です。
今回は、小宮さんのケースをもとに、遺贈寄付の仕組みと税務上のポイントをわかりやすくお伝えします。
📖 事例
小宮さんは80歳の女性で、夫はすでに他界されており、お子さんはいません。長年にわたり、地元の社会福祉法人の活動を応援してきた小宮さんは、「自分が亡くなった後も、この団体の活動を支えたい」という強い思いをお持ちでした。
相続人は兄弟姉妹のみで、預貯金と自宅不動産を所有しています。「預貯金の一部を、支援してきた社会福祉法人に遺贈したい」と考えた小宮さんが、税理士に相談にいらっしゃいました。
「遺言書にきちんと書けば、寄付した分には相続税がかからない場合があると聞いて。本当にそんなことができるのかしら、と思って…」と、少し不安そうにおっしゃっていました。
1 遺贈寄付とはどういうものか
遺贈寄付とは、遺言書の中に「特定の団体へ財産を譲る」と記載し、亡くなった後にその財産を寄付することをいいます。
生前に現金を振り込む「生前寄付」と異なり、遺贈寄付は自分が亡くなってから効力が生じます。「今すぐ財産を手放したくないけれど、最後は社会の役に立てたい」という方に向いている方法です。
寄付できる財産は現金・預貯金にとどまらず、不動産や有価証券も対象になります。ただし、財産の種類によって税務上の扱いが変わるため、注意が必要です(詳しくは後述します)。
⚠️ 遺贈の相手先が「個人」か「法人」かによっても、税務上の取り扱いが大きく異なります。寄付先が公益法人等であれば、相続税が非課税になる場合があります。詳しくは税理士に確認するようにしましょう。
2 遺贈寄付と相続税の関係
相続税は、財産を受け取った「個人」に課税される税金です。そのため、法人(会社や団体)が遺贈を受けた場合、その法人自体に相続税はかかりません。
さらに、国・地方公共団体・一定の公益法人等への遺贈については、相続税法上の非課税規定が適用されます。社会福祉法人・学校法人・公益財団法人・公益社団法人などへの遺贈がこれに該当します。宗教法人への遺贈も、要件を満たせば非課税となります。
ただし、非課税の適用を受けるには条件があります。
非課税となる主な条件
- ✦ 遺贈を受けた財産が、公益目的の事業に確実に使われること
- ✦ 遺贈によって親族の相続税・贈与税の負担が「不当に減少」しないこと
📌 「不当減少」とは
遺贈寄付によって、親族の税負担が本来よりも著しく軽くなると税務当局に判断された場合、非課税が認められないことがあります。形式上の寄付ではなく、実態を伴った公益への貢献であることが求められます。判断が難しいケースもあるため、必ず専門家と確認しながら進めましょう。
小宮さんのケースでは、寄付先が社会福祉法人であり、受け取った財産を公益事業に使うことが確実であれば、その寄付分について相続税がかからない可能性があります。
3 不動産を遺贈する場合は、もうひとつの税金に注意
小宮さんのように預貯金を遺贈する場合は、相続税以外の税金(譲渡所得税)は基本的に問題になりません。
一方、不動産や有価証券を法人へ遺贈する場合は、亡くなった方が「時価で売却した」ものとみなされ、準確定申告で譲渡所得として課税されることがあります。
財産の種類による税務の違い
- ✦ 現金・預貯金の遺贈 → 譲渡所得税はかからない
- ✦ 不動産・有価証券の遺贈 → 譲渡所得税がかかる場合がある
📌 譲渡所得税の非課税特例について
国・地方公共団体・一定の公益法人等への不動産等の遺贈については、所定の要件を満たした場合に譲渡所得税を非課税とする特例があります(租税特別措置法の規定)。要件がやや複雑なため、事前に税理士へ相談することを強くお勧めします。
4 遺留分への配慮も忘れずに
財産の一部を遺贈寄付に充てる場合、相続人の「遺留分」を侵害しないよう注意が必要です。
遺留分とは、配偶者・子・直系尊属など一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分です。遺言書で遺留分を侵害すると、相続人から遺留分侵害額の請求を受けることがあります。
⚠️ 小宮さんのケースでは相続人が兄弟姉妹のみのため、兄弟姉妹には遺留分が認められておらず、比較的自由に遺贈の割合を決めることができます。ただし、ご自身の相続人の構成によっては慎重な検討が必要です。
5 遺言書は「公正証書遺言」で作成するのが安心
遺贈寄付を確実に実現するためには、遺言書の内容が有効に執行される必要があります。そのためにも、公証役場で作成する「公正証書遺言」をお勧めします。
自筆証書遺言でも遺贈寄付を記載することはできますが、形式上の不備があると遺言が無効になるリスクがあります。
公正証書遺言の主なメリット
① 形式上の有効性が担保される
公証人が関与するため、書き方の不備で無効になるリスクがありません。
② 家庭裁判所の検認が不要
自筆証書遺言と異なり、亡くなった後に家庭裁判所で検認手続きをする必要がありません。
③ 原本が公証役場に保管される
遺言書を紛失したり、書き換えられるリスクがありません。
📌 寄付先への事前連絡も大切です
遺贈を受ける法人側にも、受け入れの準備や手続きが必要です。遺言書に記載する前に、寄付先の団体に意思を伝えておくことで、亡くなった後の手続きがスムーズに進みます。
📋 まとめ
- ✦ 遺贈寄付とは、遺言書で特定の団体へ財産を寄付する方法です
- ✦ 一定の公益法人等への遺贈は、相続税が非課税になる場合があります
- ✦ 不動産・有価証券を遺贈する場合は、譲渡所得税への注意も必要です
- ✦ 相続人の遺留分を侵害しない範囲で遺贈を設定することが大切です
- ✦ 遺言書は公正証書遺言で作成するのが確実です
- ✦ 寄付先の種類・財産の内容・相続人の構成によって税務の取り扱いが異なるため、相続専門の税理士への相談をお勧めします
★ 「遺贈寄付を検討しているけれど、税金のことが心配」という方へ
遺言書の作成から税務上の取り扱いまで、ご状況に合わせて丁寧にご説明します。「まずは話を聞いてほしい」というご相談も、どうぞお気軽にお問い合わせください。
👩 たかやまあゆみ税理士事務所 女性相続support
税理士 たかやまあゆみ(相続専門の税理士 港区)
相続専門の税理士として、相続・事業承継をサポート。「難しい税務をわかりやすく」をモットーに、多くのご家族の相続に寄り添っています。