
相続税コラム
「両親は元気だから、まだ大丈夫」
その油断が、家族を困らせるかもしれません。
2026年 / 女性相続support 税理士コラム
「両親はまだ元気だし、相続の話は早いかな…」
そう感じている方も多いと思います。
でも実は、相続の準備は「元気なうちにしかできない」ことがあります。
今回は、ご両親が元気なうちに相談にいらっしゃった山本さん一家の事例をもとに、「親が認知症になったとき、相続はどうなるのか」をわかりやすく解説します。
山本さんご一家は、父・母・長女・次女の4人家族。
ご両親はまだお元気ですが、「将来のことが心配で…」と、長女の山本さんが相談にいらっしゃいました。
「もし父が先に亡くなって、そのとき母が認知症だったら、どうなるんでしょう?子どもたちで勝手に手続きできますか?」
実はこのご質問、とても大切な視点です。
1
相続人が認知症だと、話し合いができない
人が亡くなると、残された家族は「誰がどの財産を引き継ぐか」を全員で話し合って決めます。これを遺産分割協議といいます。
この話し合いは、相続人全員が参加して、全員が合意しなければ成立しません。
山本さんのケースで考えると、父が先に亡くなった場合、相続人は「母・長女・次女」の3人です。
もしそのとき母が認知症で判断能力がない状態であれば、母は遺産分割協議に参加することができません。
子どもたちが「お母さんのためを思って」行動しても、法律上は認められないのです。
2
後見人をつければ進められるけれど…
では、どうすれば手続きが進められるのでしょうか。
認知症で判断能力がない方に代わって手続きを行う制度として、成年後見制度があります。家庭裁判所に申し立てを行い、「後見人」という代理人を選任してもらう仕組みです。
後見人がいれば、母の代わりに遺産分割協議に参加してもらえます。
ただし、この制度には家族にとって大きな負担が伴います。
成年後見制度を使うと、こんなことが起きます
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✦
家庭裁判所への申し立て手続きが必要で、時間と費用がかかります -
✦
後見人は遺産分割が終わっても、母が亡くなるまでずっと続きます -
✦
毎年、家庭裁判所への報告書類の提出が必要です -
✦
後見人が専門家(弁護士・司法書士など)の場合、毎月報酬が発生することがあります
「相続の手続きが終われば後見人も終わる」と思う方が多いのですが、そうではありません。一度始まったら、ご本人が亡くなるまで続く制度です。家族の負担がとても大きいと言われる理由がここにあります。
3
元気なうちに遺言書を作っておくことが、いちばんの備え
では、どうすればこの問題を避けられるのでしょうか。
最も効果的な対策は、ご両親が元気で意思判断できるうちに、遺言書を作成しておくことです。
遺言書があれば、遺産分割協議をしなくても、遺言書の内容に従って相続手続きを進めることができます。
つまり、お父さんが亡くなったとき、お母さんが認知症であっても、遺言書さえあれば子どもたちだけで手続きを進めることができます。
✗ 遺言書がない場合
認知症の母に後見人が必要
手続きに時間・費用がかかる
後見人がずっと続く
家族の負担がとても大きい
✓ 遺言書がある場合
遺産分割協議が不要
後見人も不要
遺言書の内容で手続きできる
子どもたちの負担が大きく軽減
山本さんのご両親はまだお元気です。今がまさに、準備を始める絶好のタイミングと言えます。
📋 まとめ
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✦
相続人が認知症の場合、遺産分割協議ができなくなります -
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子どもが代わりに手続きを進めることは、法律上できません -
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成年後見制度で対応できますが、家族の負担がとても大きい制度です -
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元気なうちに遺言書を作ることが、家族みんなへの最大の贈り物です
★ 「うちも心配…」と感じたら、今すぐご相談ください
「まだ早い」と思っているうちが、いちばんの準備のチャンスです。
ご両親が元気なうちに、一緒に考えましょう。
たかやまあゆみ税理士事務所 女性相続support
税理士 たかやまあゆみ
相続専門の税理士として、相続・事業承継をサポート。「難しい税務をわかりやすく」をモットーに、多くのご家族の相続に寄り添っています。