
相続コラム
【生前贈与の持ち戻しが7年に!】
2024年から変わった「贈与の常識」を整理する
「毎年コツコツと子供に生前贈与をしてきたのですが、今も相続税対策として有効なんでしょうか?」
このようなご相談が、2024年以降とても増えています。長年「常識」とされてきた節税対策の生前贈与が、税制改正によって大きく変わったからです。
「もう何年も続けてきたから相続税のことは安心」と思っていた方が、改正の内容を聞いて「えっ、そんなの知らなかった!」と驚かれることが少なくありません。
今回は、ご相談にいらっしゃった杉原さんのケースをもとに、2024年改正で変わった「生前贈与加算のルール」をわかりやすく整理します。
杉原さん(60代・男性)は、数年前から毎年、息子さんに生前贈与(暦年贈与)を続けてきました。「相続税対策になると聞いたから」とコツコツ実践されてきたのですが、知人から「2024年の税制改正で生前贈与の持ち戻し期間が変わったらしい」と聞き、不安になってご相談にいらっしゃいました。
「今まで続けてきた贈与は、将来相続が起きたときに、全部相続財産に戻されてしまうの?これまでの努力は無駄になってしまうの?」と、とても心配そうなご様子でした。
実は、今回の改正は「すべての贈与が無意味になる」というものではありません。ただ、これまでとは制度が大きく変わったのです。きちんと整理、理解した上で、今後の対策を考えることが大切です。
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そもそも「生前贈与加算(持ち戻し)」とは?
相続税には「生前贈与加算」というルールがあります。これは、亡くなる前の一定期間に行われた生前贈与を、相続財産に「持ち戻して(足し戻して)」相続税を計算するというルールです。
なぜこのルールがあるかというと、「体調が悪くってから、亡くなる直前に駆け込みで生前贈与をして相続税を減らそう」という行為を防ぐためです。そのまま無制限に認めてしまうと税負担の公平さが保てなくなるため、亡くなる前の一定期間に生前贈与をした金額は、相続財産に加算して相続税を計算する、というルールが設けられているのです。
生前贈与加算のポイント
- ✦亡くなる前の一定期間の暦年贈与は、相続税の計算上「相続財産に加算」する必要がある
- ✦贈与税の基礎控除の範囲内の贈与であっても、持ち戻しの対象になる
- ✦贈与時に贈与税を払っていた場合は「贈与税額控除」があるため、贈与税と相続税の二重課税にはならない
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2024年から持ち戻し期間が「3年」から「7年」に
これまで生前贈与加算の対象は「亡くなる前3年以内の贈与」でした。それが、令和5年度税制改正により、2024年(令和6年)1月1日以降の暦年贈与から、段階的に最長7年まで延長されることになりました。
いきなり7年に切り替わるわけではなく、相続が発生するタイミングによって対象期間が変わる移行措置が設けられています。
段階的な延長スケジュール(相続開始日による)
- ✦〜2026年12月31日までの相続:従来通り「3年以内」の贈与が対象
- ✦2027年〜2030年の相続:2024年1月1日以降の贈与が対象(移行期間)
- ✦2031年1月1日以降の相続:「7年以内」の贈与が対象(完全施行)
また、延長された4年分(亡くなる前4〜7年の間の贈与)については、その期間の贈与の合計額から一定額を差し引いた金額を加算するという緩和措置も設けられています。
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「誰への贈与か」ではなく「誰が財産を取得したか」で決まる
生前贈与加算の対象かどうかは、贈与を受けた人が相続人かどうかではなく、その人が実際に相続や遺贈によって財産を取得したかどうかによって決まります。
法定相続人であっても、代襲相続人であっても、相続や遺贈で財産を取得しなければ加算の対象にはなりません。「相続人だから自動的に対象」という整理は正確ではないため、注意が必要です。
✗ 加算の対象になる人
- ・法定相続人(相続・遺贈で財産を取得した人)
- ・代襲相続人(同上)
- ・受遺者(遺言で財産を受け取る人)
- ・みなし相続財産の受取人(生命保険金・死亡退職金など)
✓ 加算の対象にならない人
- ・相続・遺贈で財産を取得しなかった相続人・代襲相続人
- ・相続放棄をした人(遺贈等で財産を取得した場合を除く)
- ・相続人でない孫(遺言・みなし相続財産の指定がない場合)
注目したいのが「孫への贈与」です。孫は通常、法定相続人ではありません。遺言や生命保険の受取人に指定されていない孫への贈与は、今回の改正後も引き続き生前贈与加算の対象外です。
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相続時精算課税制度は「生前贈与加算」の対象外だが、注意点がある
暦年贈与と並ぶ贈与制度として「相続時精算課税制度」があります。この制度を選択した贈与は、暦年課税の「生前贈与加算」の対象にはなりません。年間の基礎控除の範囲内であれば、相続財産に加算されず、相続税もかかりません。ただし、基礎控除を超えた部分は相続時に相続財産へ加算されて相続税を計算する点に注意が必要です。
相続時精算課税制度の仕組み
- ✦この制度は「課税を相続時まで後ろ倒しにする」仕組み。贈与した財産は、年間の基礎控除を差し引いた部分が相続時に相続財産へ加算されて相続税を計算する
- ✦2024年の改正で年間の基礎控除が新設され、その基礎控除の範囲内の贈与については相続財産への加算が不要になった
- ✦一度選択すると暦年課税には戻れない。また、適用できる贈与者・受贈者に要件がある
📋 まとめ
- ✦2024年1月以降の暦年贈与は、段階的に生前贈与加算の期間が「7年」に延長される
- ✦加算の対象は「相続・遺贈で財産を取得した人への贈与」。相続人であっても財産を取得しなければ対象外
- ✦相続時精算課税制度は暦年課税の「生前贈与加算」の対象外だが、基礎控除を超えた部分は相続時に加算される
- ✦これまでと同じ考え方では注意が必要なケースもあります。ご自身の贈与が新ルールでどう変わるか、早めに確認されることをおすすめします。
★ 「今の贈与、このまま続けていいの?」と思ったら
生前贈与の見直しは、「相続が起きてから」では間に合いません。誰に・どの制度で・いつから贈与するかによって、最適な答えはひとりひとり異なります。
「まずは話を聞いてみたい」という段階でも、お気軽にご相談ください。
たかやまあゆみ税理士事務所 女性相続support
税理士 たかやまあゆみ(相続専門の税理士 港区)
相続専門の税理士として、相続・事業承継をサポート。「難しい税務をわかりやすく」をモットーに、多くのご家族の相続に寄り添っています。