
相続コラム
「相続放棄」を考えている方へ
手続きの流れと、知らないと怖い注意点
「夫が亡くなって手続きを進めていたら、知らなかった借金が出てきたんです。子供たちに迷惑をかけたくないので、全員で相続放棄しようかと思っているのですが…」
相続放棄のご相談は、こうした「想定外の借金が発覚した」というケースが多くを占めます。大切なご家族を亡くされた直後の、とても辛い状況の中でのご判断です。
相続放棄は「やり直しのきかない手続き」です。一度選択すると取り消すことができないため、正しく理解した上で判断することがとても大切です。
今回は、ご相談にいらっしゃった野村様のケースをもとに、相続放棄の基本と知っておきたい注意点をわかりやすくお伝えします。
野村様(74歳・女性)は先日ご主人を亡くされ、相続の手続きを始めたところ、ご主人名義の借入金があることが発覚しました。預貯金などプラスの財産はそれほど多くなく、このまま相続すると借金を引き継いでしまう可能性があります。
「子供たちに相談したら、みんなで相続放棄した方がいいと言っていて。でも、どこで手続きするのか、いつまでにしなければならないのか、全くわからなくて」とご相談にいらっしゃいました。
相続放棄は正しく手続きすれば有効な選択肢ですが、知らないうちにできなくなってしまうケースや、放棄した後で思わぬ影響が生じるケースもあります。焦らず、正しく理解することが大切です。
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相続放棄とは何か
相続放棄とは、亡くなった方の財産に関する一切の権利と義務を引き継がないことを選択する手続きです。預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払いの税金などマイナスの財産も含めて、すべて相続しないという意思表示です。
相続放棄をした人は、はじめから相続人ではなかったものとして扱われます。これは単に「私は受け取りません」と言うだけでは成立せず、家庭裁判所への正式な申述手続きが必要です。
相続放棄が向いているケースとしては、借金などのマイナスの財産がプラスの財産を上回る場合や、すでに他の相続人が遺産を引き継ぐことが決まっており自分は関わりたくない場合などがあります。
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期限と手続きの流れ
相続放棄には期限があります。「自分が相続人であることを知った日」から3か月以内に、家庭裁判所へ申述(しんじゅつ)しなければなりません。この期間を「熟慮期間」といいます。
期限に間に合わない事情がある場合は、家庭裁判所に申立てをすることで延長が認められることもあります。ただし、何もしないまま期限を過ぎると、自動的に相続を承認したものとみなされてしまいますので注意が必要です。
相続放棄の手続きの流れ
- ✦財産・負債の状況を確認する プラスとマイナス、どちらが多いかを把握します。通帳・不動産・借入の明細などを集めましょう
- ✦家庭裁判所へ申述書を提出する 亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、申述書と戸籍謄本等を提出します
- ✦受理通知を受け取る 裁判所から相続放棄申述受理通知書が届けば、手続き完了です。この書類は大切に保管しましょう
手続き自体は書類がそろえば本人でも行えますが、期限が迫っている場合や財産の状況が複雑な場合は、司法書士や弁護士などの専門家に依頼する方が安心です。
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知らないと怖い、相続放棄の注意点
相続放棄には、知らずにいると後悔しかねない重要な注意点がいくつかあります。
財産に手をつけると放棄できなくなる
預貯金を引き出したり、遺品を売却したりすると「相続を承認した」とみなされ、後から相続放棄ができなくなることがあります。相続放棄を検討している間は、亡くなった方の財産に手をつけないことが原則です。
放棄すると、次の順位の親族に相続が移る
先順位の相続人が全員放棄すると、次の順位の方(故人の親、兄弟姉妹など)が新たな相続人になります。その方たちへの連絡は義務ではありませんが、知らせないと親族関係に影響することもあります。事前に状況を伝えておくことが大切です。
生命保険の受取は放棄に影響しない
受取人が指定された生命保険金は、相続財産ではなく受取人固有の財産です。相続放棄をしても生命保険金は受け取ることができます。ただし、受取人の指定がない場合は相続財産として扱われることがあるため、契約内容の確認が必要です。
相続放棄は一度申述が受理されると、原則として取り消すことができません。「放棄した後でプラスの財産が出てきた」「やっぱり受け取ればよかった」となっても、基本的に覆すことはできないのです。だからこそ、財産の全体像を把握した上で判断することが大切です。
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相続放棄が本当に最善か、立ち止まって考えてほしいこと
借金があるとわかると「すぐに放棄しなければ」と焦ってしまいがちですが、必ずしも相続放棄が最善の選択とは限りません。
放棄しない方がよいケース
・不動産など調べてみたら価値のある財産があった
・借金より預貯金の方が多かった
・「限定承認」という方法が使えるケース
放棄を検討すべきケース
・借金がプラスの財産を明らかに上回る
・財産の規模にかかわらず、相続関係に関わりたくない
野村様のケースでも、まず財産・負債の全体像を整理し直したところ、「全員で放棄する前に、もう少し調べてから判断した方がよい」という結論になりました。まずは早い段階で、専門家と一緒に現状を整理することが大切です。
📋 まとめ
- ✦相続放棄は家庭裁判所への申述が必要で、期限内に手続きしないと自動的に相続が確定します
- ✦財産に手をつけてしまうと放棄できなくなる場合があるため、相続放棄を検討中は財産を動かさないことが原則です
- ✦先順位の相続人が全員放棄すると、次順位の親族へ相続が移ります。親族への連絡も忘れずに
- ✦相続放棄は取り消せません。まず財産・負債の全体像を把握してから判断することが、後悔しないための一番の近道です。
★ 「借金があるとわかった、相続放棄すべき?」とお悩みの方へ
財産と負債の全体像を整理した上で、相続放棄が本当に最善かどうかを一緒に考えましょう。期限が迫っている場合も、まずはご相談ください。
「何から手をつければいいかわからない」というご相談も、どうぞお気軽にお問い合わせください。
たかやまあゆみ税理士事務所 女性相続support
税理士 たかやまあゆみ(相続専門の税理士 港区)
相続専門の税理士として、相続・事業承継をサポート。「難しい税務をわかりやすく」をモットーに、多くのご家族の相続に寄り添っています。