
相続コラム
「基礎控除の範囲」だから申告しなくていい——その判断、注意が必要です!
「電卓で大体の財産を足してみたら、基礎控除の枠内に収まりました。だから【相続税の申告はしなくていい】ということですよね?」
ご自身で試算をされた方から、こう質問されることがあります。財産の額を合計した金額が基礎控除内であれば申告不要というのが、必ずしも間違いということではありません。ただ、その「合計した金額」の中身次第で話が変わってくることがあるのです。
評価を下げる特例を使いたい場合や、配偶者の税額軽減の規定を適用する場合など、合計額が基礎控除内でも、相続税の申告が必要になることがあります。あるご家庭の試算をお手伝いした際の流れから、その分かれ目がどこにあるのかをたどってみます。
ご相談事例
主人を亡くされたばかりの奥様と、同居していたご長男。お二人でノートに財産を書き出し、自宅の土地建物と預貯金を足し合わせたところ、基礎控除の枠に収まる数字が出ていました。「これなら相続税の申告や相続税の納付はいらないはず」というのが、お二人の見立てでした。
ただ、ノートを一緒に見返すと、気になる箇所が2か所ありました。
自宅の土地は「小規模宅地等の特例」の対象になる土地でしたが、お客様のノートには、この特例適用後の額が「土地の評価額」として書かれていました。確かにこの特例を使えば税額がゼロになる見込みでしたが、この特例は「申告書を提出すること」自体が適用要件の1つになっていることをご相談者様はご存じなかったのです。(配偶者が財産を受け取る際の税額軽減も「申告書を提出すること」が適用要件となっています)
もう一つは、ご主人がご家族のために遺していた生命保険2,000万円。奥様は「保険金は相続が非課税」と考えていましたが、実際には一定の非課税枠を超えた分は、相続税の課税対象になるのです。
ここで押さえておきたいのは、「税額がゼロなら申告してもしなくていい」という解釈ではないという点です。特例は「申告」という手続きを通過してはじめて成り立つものであり、特例適用前の評価額で申告が必要かどうかの判断を行います。つまり、書き出したノートには、小規模宅地等の特例を適用する前の土地の評価額を記載しなくてはなりませんでした。また、死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の人数)を超える死亡保険金も加算して、確認する必要があったのです。
まとめ
- ✦財産をざっくり足し合わせて基礎控除内に収まったとしても、それだけで手続き完了とは限りません。
- ✦自宅の評価を下げる特例や配偶者の税額軽減は、申告書を提出してはじめて適用できる制度です。
- ✦生命保険金のように、財産のリストに書き漏れやすいものがありますのでご注意ください。
- ✦結論を出す前に、財産の全体像と特例の適用要件をしっかり確認していただくと安心です。申告の要否は、専門家に相談しましょう。
手元の試算に、書き漏らしがないか確かめたい方へ
自宅の土地、保険金、その他の財産まで含めて、申告の要否と使える特例を一緒に照らし合わせていきます。
「相談するほどのことか分からない」という段階でも、遠慮なくお声がけください。
たかやまあゆみ税理士事務所 女性相続専門
たかやまあゆみ(相続専門の税理士 港区)
相続・事業承継のご相談を担当。専門用語をかみ砕いてお伝えすることを大切に、日々ご家庭ごとの相続税申告に向き合っています。
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